TAMRON LENS BLOG

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   設立20年になる仏山タムロン工場は、マザー工場である青森3工場とほぼ"肩を並べるほど"に成長している。そのことは前回のブログでもお話しした。
   ただし、一部の重要パーツや処理(たとえば金型、非球面GMレンズやナノ構造のレンズコーティング)についてはマザー工場に頼っているところもあるが、金型を使っての樹脂成形、精密金属切削加工、レンズ研磨、電子部品の部組み、そして交換レンズの本組みは仏山タムロン工場でおこない、ダイレクトに世界中に製品を出荷している。

   交換レンズの組み立て(部組み、本組み)は、製品の仕上がり品質に直結する大切な工程である。ところが、指定されたとおりに部品を組み付け、固定しただけではタムロンが目標とする製品に仕上げることはできない。プラモデルを組み立てているのとはわけが違う。
   部組みとはサブ工程ともよばれ、比較的小さなパーツ類をあらかじめユニットに組み上げておくこと。本組みとはレンズ組み立てのメイン工程のことで、部組みしたユニットを指定通りに組み合わせて完成品にする工程である。

   ここがレンズ組み立てのキーポイントでもあるのだが、レンズ組み立て(本組み)の途中では、何度もチェック(検査)を繰り返し、必要なら調整をし直し、ときには、いったん組み上げたレンズ群を外して丁寧に調整してからふたたび組み付けるということもやる。高い品質、優れた性能を求めるなら決しておろそかにできない作業がたくさんある。

   まず、下のチャート図をご覧いただきたい。交換レンズの組み立て工程とその流れを大まかに示したものだ。
 

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   大別すると作業工程には、サブ工程(部組み)、メイン工程(本組み)、そして出荷工程の3つがある。チャート図に記載はないが、サブ工程のところではそれぞれ部品組み立てのときには必ず調整や検査をおこなっている。

 

   「サブ工程(部組み)」では、研磨を終えた光学レンズを「レンズ群」として組み付けたり、小さな電子部品を組み合わせてAFユニットやVCユニットなどに仕上げたり、絞り機構を組み付けてユニットにしたり、交換レンズを構成する機構部品づくりをする。
   あらかじめ作り上げられたいくつかの必要部品を集めて、ようやく交換レンズに仕上げる本組みをする。ここからが交換レンズづくりのメイン工程となる。

   ここでメイン工程での組み立ての順番を、簡単に説明しておきたい。
   多くの交換レンズはつぎのような手順で組み上がっていく。私が仏山タムロン工場に見学に行ったときに、メイン工程で組み上げていた「16-300mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD MACRO(Model B016)」と、「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(Model A007)」の2本のズームレンズを例にした。ざっと流し読みしていただければいい。

   ①各レンズ群の組み付け(レンズの基本となる外鏡枠の中に各群をはめ込み仮固定する)
   ②絞り機構を組み付け(レンズ群とセット)
   ③VCユニットを組み付け(レンズ群とセット)
   ④フレキシブル基板を取付け
   ⑤ズームリング/ピントリングの組み付け
   ⑥ピエゾドライブ(PZD)または超音波モーター(USD)ユニットの組み付け
   ⑦メイン基板(円形基板)を後部に取付け
   ⑧レンズ鏡筒最後部を取付け
   ⑨AFやCVの切り替えスイッチを組み付け
   ⑩マウントを取付け
 

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   16-300mm F/3.5~6.3 Di II VC PZD(Model B016)の組み立てライン。マウントが取り付けられたレンズは、写真手前側の検査工程に向かっていく。

 

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   16-300mm (Model B016)ズームのレンズ群の組み付け。棚の上にレンズ部品を作業台に移して、画面右にあるビス類を使って組み付ける。上からぶら下がっているのは締め付けトルクが設定できる電動式ドライバー。

 

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   レンズ後部に円形のメイン基板を取り付けて、フレキシブル基板を接続する。この後に、後部鏡筒をセットしてからレンズマウントを固定する。16-300mm (Model B016)。

 

   以上の①から⑩までが交換レンズ(ズームレンズ)の組み立てで、これで"いちおう"交換レンズとしてのカタチが整う。しかし、ここからがメイン組み立て工程の本番、本命ともいえる検査と調整の工程が控えている。
   この検査と調整こそが高品質のレンズを作り上げるための、もっとも重要な工程である。どの検査も調整も、大変にデリケートで精密。専用の調整機器(タムロンもそうだが各メーカーとも自前で開発して使っているものが多い)を使用して検査や調整をする工程がたくさんある。以下、大まかな検査、調整工程。

   ①フランジバック(FB)の調整 ━━ 正確な無限遠にピントが合わせられるようにFB(マウント面からセンサー面までの距離)を調整する
   ②光軸調整 ━━ 調芯(ちょうしん)ともよばれる大変に重要な調整工程、組み付けた各レンズ群の芯が正しく1本の光軸に合致しているか検査、もし傾いて芯がずれていれば片ぼけの原因ともなり、必ず正確に合わせ直す
   ③MTF検査/調整 ━━ 一般的には専用のMTF検査器でチェックして、調整幅が書き込まれたメモを見ながらレンズ群を外したり、ワッシャを加えたりして調整する、ここも重要な工程
   ④VC調整、AF調整 ━━ 手ブレ補正(VC)とAFが所定の基準通りに作動するか検査する、必要なら微調整をおこなう
   ⑤カメラ検査 ━━ 対応のカメラボディにレンズをセットして基本操作をおこなって不具合がないかチェックする
   ━━ この後、ズームリングのラバーや化粧リングを取り付けるなど「外装」を整える。
   ⑥フォーカス/ズームトルク検査 ━━ MFでのフォーカス(ピント)リングの操作感、ズーミングして回転トルクやゴリゴリ感などがないか慎重にチェック、感覚的な検査なので経験豊富なベテランがおこなう
   ⑦内観・外観検査 ━━ 最終検査である、レンズ内のゴミのチェックから外観まで徹底的に目視検査をする
   ━━ 以上の検査と調整を終えてほぼ完成品となる。その後、シリアルナンバーの刻印、レンズキャップやレンズフードなどをセットして梱包作業に移る
 

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   コリメータとよばれる専用機器を使ってFB(フランジバック)を検査をする工程。調整が必要なレンズは、その調整量を専用伝票に書き込んでレンズと一緒に調整工程に移す。16-300mm (Model B016)。

 

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   組み上がり調整が済んだレンズはカメラボディに取り付けてさまざまな動作をおこなう。これは動作中の異音チェックをしているところ。他の音で邪魔されないようにビニールで囲った中で作動チェックしている。16-300mm (Model B016)。

 

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   SP24-70mm (A007)の最終検査。フォーカシングやズーミングを繰り返して感触やトルク感を確認している。1本1本のレンズは、検査や調整をおこなったときの数値がメモされた伝票が必ず一緒に移動する。この伝票を見れば、誰が、どこで、どんな作業をおこなったのかすぐにわかる。レンズの履歴書だ。

 

   メイン工程での交換レンズの組み立てと検査、調整の解説をしたが、実はこれ以上に細かな検査や調整の工程が含まれている。ひとつの作業ごとに(組み立て工程も検査工程も)エアーダスターを使って丁寧にゴミやほこりを取り除いて、次の行程に移すようにしている。むろん、組み立て、検査をする作業場はクリーンルームになっている。
   私は仏山タムロン工場でのそんな作業を眺めていて、「ソコまでやるのか」と感心させられたことが何度もあった。

   こうした組み立て、検査の工程は、国内の青森工場(弘前工場)でも同じようにおこなわれていて、その方法やシステムをそっくり仏山のタムロン工場でもやっているという。タムロンというブランド名の付いたレンズを(それがどこで作られようが)責任をもってユーザーに届ける、そのための徹底した品質管理と性能確保なのだ。
   だからこそ「タムロンのレンズはどこで作っても同じ品質、同じ性能の製品」になるわけだ。

   次回のブログでは、仏山タムロン工場でレンズ製造にかかわっている人たちの人物紹介などをしながらレンズ作りの様子を見直してみようと思う。どうぞお愉しみに。

 

 

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   ちょっと信じてもらえないかもしれないが、長年、たくさんの交換レンズを使って、撮影して、撮った写真を見ていると、実際に撮影しなくてもレンズを操作してみただけで、写りのだいたいの良し悪しぐらいはわかる。ここでおべんちゃらをいうつもりはないが、タムロンの新しいSPシリーズの単焦点レンズは、手にしてカメラボディにセットしてファインダーを覗いただけで、「おおっこれは良い写りをしそうなレンズだぞ」と感じさせるなにかがある。写してみれば、実際にその通りに良く写るのだ。
   SP35mm F/1.8 Di VC USD Model F012)、絞り優先オート(F/5.6、1/60秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISO100。

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)

多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。

ホームページは『 http://www.thisistanaka.com/

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   レンズを製造する工場がやるべきことは、ごく簡単に言うなら、設計された図面や数値をもとにして正確に「カタチ(製品)」に作り上げることだ。レンズを磨き、レンズの部品を作り、それらを正確に組み立てる。容易なようだが大変に難しい。大きな責任もある。
   少し大袈裟な言い方になるが、タムロン交換レンズの「品質」は、結局は工場のもの作りの「ウデ(生産技術力)次第」だと言えなくもない。

   どれほど優れた設計をしても、工場側のほうが設計者の期待値に応えられなければ、つまり設計図面どおりに作れなかったり、正確に組み立てられなければ製品として成り立たない。
   しかし、設計目標値に見合うもの作りをすることは工場としての最低条件であるが、設計図面を受け取ったからといってすぐに製品が作れるわけではない。
   工場で生産スタートする前に、何度も試作が繰り返され、品質保証部による検査を受けながら、生産技術部と工場側が話し合い生産設備を整えたり、効率的で安定した品質が確保できるレンズ作りの方法を見極めて、ようやく工場で生産が始まる。

   というわけで、新しい生産設備や、生産改善策を積極的に取り入れている中国の仏山タムロンレンズ工場でレンズ作りの現場を見学させてもらい、タムロンのもの作り、品質、技術力を見てみようと思う。
 

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   仏山市内にあるタムロン工場の俯瞰イラスト図。敷地はL字型で、何度か増改築されている。工場建物の横には社員のための寮が同居している。創業時には周囲は畑が広がっていたそうだが、いまは工場やマンションが立ち並んでいる。イラスト図のような"のどか"な雰囲気はない。

 

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   タムロン工場の正面玄関。上のイラスト図にある赤い矢印で示した場所になる。クルマの右手には守衛室がある。とにかく、広くて大きな工場だ。

 

   中国のタムロン工場は広東省広州市の南、約30㎞の仏山市内にある。仏山市は地方から出稼ぎに来て生活をしている人口を合計すると約740万人が暮らす大都会である。7世紀の中頃、三体の仏像が発見されたことが地名の由来で、古くは陶器作りの街だった。今は工業技術を中心に発展をし続ける大きな街となっている。

   タムロン中国工場の正式名称は「騰龍光学(仏山)有限公司」という。
   工場設立は1997年で、翌1998年から操業を始めていて、ほぼ20年になる。従業員数は約3000人で平均年齢は26.3歳と若い。操業は多くの部門が24時間体制である。

   地方から出稼ぎに来ている社員のためには、工場の敷地内には寮があって、最大で1000人ほどが生活できる。従業員用の専用食堂も完備していて朝、昼、夜、それと深夜の4回の食事が可能という。
   なかには、仲間どうし共同でアパートを借りて生活している社員もいる。食費、寮費、アパート費用ともに会社からの援助システムがあるなど充実している。中国の他の工場に比べてタムロン工場の離職率は低いという。実際、15年以上の勤続年数のベテラン社員もたくさんいる。
 

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   アルミ金属製のレンズ鏡筒の製造工程。設計図面の指示ごとにマシンの細かな設定をおこない精密なアルミ鏡筒を製作していく。切削油を使用するため、滑らないように床は木製になっている。自動切削マシンがずらーっと並んでいる。

 

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   研磨と洗浄をすませたレンズは1枚づつ両面にレンズコーティングをする。「傘」とよばれるプレートの上にレンズを並べて、それを画面の右手にある受け渡し棚に置く。二重扉になっていて(防塵のため)、レンズが並んだ傘を外から取り出しコーティング機械にセットする。この作業場は完全クリーンルームになっている。私は今までいくつもの他メーカーのこうした作業を見てきたが、仏山タムロン工場ほどのクリーン化の徹底、規模の大きさ、広さの工場はほとんど見たことがない。

 

   ところで、現在、タムロンの「工場」は、国内、海外にあわせて6カ所ある。
   埼玉県さいたまの本社には金型製造の工場があり、これが1つ。青森県には弘前工場(金属部品加工、レンズ組立)、浪岡工場(球面レンズ研磨、非球面ガラスレンズの製造)、大鰐工場(プラスチック成形品の製造)の3つがある。そして中国・仏山のタムロン工場と、2013年設立のベトナム・ハノイ市にあるタムロン工場の2つがある。

   中国・仏山のタムロン工場では、レンズ研磨加工から、プラスチック成形や塗装、レンズ枠にある銘板などの印刷、金属部品の加工、レンズ組立をして完成品を梱包、そして出荷までをひとつの工場の中で、ほぼ一貫生産をおこなっている。

   ただし一部の部品については仏山タムロン工場で作っていないものもある。電子部品(AFやVCのユニットや電子基板)もそうだが、プラスチック成形をおこなうための金型はさいたま本社内の工場から、非球面ガラスレンズ(GM)やナノ構造のeBANDコーティングを施した特殊レンズなどは青森・浪岡工場から供給を受けている。レンズ梱包材や化粧箱などは仏山市周辺の協力工場で作られているものもある。
 

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   お昼の社員食堂の一部。食堂は、この写真に写っているスペースのざっと5~6倍の広さがあった。それでも社員の数が多いものだから、一度に全員が食堂に入れない。職場ごとに時間をずらして食事をするようにしている。若い女性が多くて、とても華やかな雰囲気だ。ほぼ全員がスマホを持っているのは日本の人たちと同じ。

 

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   本日の献立。食堂内の大きな液晶ディスプレイにAコース、Bコースの紹介が示されている。各自、トレイを持って給仕場で並ぶ。ごはんは自分で好きなだけトレイに入れる。ごはんだけは、お代わり自由の食べ放題だそうだ。食費のほとんどは会社から補助がでる。自己負担分はほんのわずかですむ。

 

   すでに皆さんはご存じのことと思うが、タムロン、すなわち株式会社タムロンは交換レンズだけを作っているメーカーではない。もちろん、事業全体からみればカメラ用交換レンズの生産の比重は大きく、他メーカーからの交換レンズのOEM生産(相手先ブランドによる委託生産)もある。
   そのほかコンパクトデジタルカメラやビデオカメラ用のレンズユニットの生産もおこなっている。さらに独自設計による監視カメラ用レンズや車載カメラ用レンズも製造するなど、総合光学機器メーカーでもある。

   交換レンズ以外の先進的な光学機器を開発、設計、製造することで、そこで得られた新しい技術やもの作りのノウハウが、今度は新しい交換レンズの設計や製造に応用され活用されていることもある。

   現在、仏山タムロン工場で生産している交換レンズは8種類ほどある。中には青森県の浪岡工場でレンズ作りをして弘前工場でレンズ組み立てを一定期間続けたあとに、その組み立てラインをほぼそのまま仏山タムロン工場に移して生産しているレンズもある。たとえば「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(Model A007)」や「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」などがそうだ。
   タムロンは青森3工場を「マザー工場」として位置づけている。レンズ作りの長い歴史もあるし、レンズ製造や生産ラインについて優れた技術と知識を備えたベテランも多い。
 

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   新入社員のための「勉強会」らしい。作業工程の流れや、交換レンズの仕組みなどを講師が説明をしていた。私は後方から少しだけ見学していたが、予想以上に難しい内容だった。若い女性ばかりで、どれだけ理解しているのか、人ごとながら心配になったほど。

 

   まず、青森のマザー工場で生産を始めてみて、もしそこで不具合などが見つかれば修正したり改善する。安定した生産体制が整ってから仏山タムロン工場に移していた。
   青森マザー工場から仏山タムロン工場に生産ラインを移管するというシステムをしばらく続けてきたが、しかし、だんだんと仏山タムロン工場の生産技術も向上してきた。そのうち、青森マザー工場と肩を並べるまでに成長してきた。

   その成果として、最新型の「SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)」や「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD(Model A011)」「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD (Model A022)」は青森マザー工場を経ずに、いきなり仏山タムロン工場で量産が始められるようにまでなった。そこまでの実力があると認められたわけだ。
   いまの仏山タムロン工場は青森のマザー工場の長年の指導に基づき、ほぼ独立自立しつつあり、ベトナムタムロン工場の「マザー工場」になるまでに成長してきている。

   次回のこのブログでは、仏山タムロン工場の中で実際に交換レンズが組み立てられ、検査を重ね、出荷されるまでの工程を眺めてみようと思う。次回もどうぞお愉しみください。
 

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   仏山市のタムロン工場に向かったときは、広州市郊外の空港から高速道路を使って約1時間ほど走る。仏山市までの高速道路沿いは、左右ともずーっとビルやマンションが連なっていた。自然風景はほとんど見かけなかったほど。この写真のように建築中の建物(マンション)も多くあって、街がどんどん広がっていくのが良くわかる。高速道路を走るクルマも途切れることがない。アメリカ車、ヨーロッパ車、そして日本車も多く見かけた。
   28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)、絞り優先オート(F/8、1/160秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISOオート(ISO280)

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)

多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。

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   光学ガラスレンズに仕上げて、交換レンズ組み立て工程に渡すまでの「作業」としては、おもに4つの工程がある。

   (1)光学レンズの研磨や非球面レンズの製造
   (2)レンズ部品の製造(貼り合わせや部分組み付け)
   (3)最終組み立て(枠に嵌め込む、部組み)
   (4)検査と調整、清掃

   1本の交換レンズには多くの光学ガラスレンズ(硝材)が組み合わさってできあがっている。他にもあれこれの部品が必要ではあるが、なんといっても光学レンズこそがもっとも重要な「基幹部品」である。第2回のブログで述べた「結像性能」も「感応性能」も、光学レンズの組み合わせ、レンズの仕上げの良し悪しでほぼ決まってしまうと言ってもいいだろう。

   まず、光学設計の担当者が製品の企画決定を受けて設計に取りかかる。
現在約200種類以上あるといわれている光学ガラスレンズの中から、光の屈折率、分散特性、透過率、厚み、大きさなど、さまざまな光学的要素を見極めながら最適な光学レンズを選び出し、組み合わせる。
   具体的には、収差補正、解像力、コントラスト、ぼけ味、フレア/ゴースト、レンズの大きさや重さ、コスト、作りやすさなどを考えながらレンズ設計を決めていく。

   そうして、できあがった設計図の指示に従って、工場では光学ガラスを研磨したり、非球面レンズを作ったりして1枚の精密な光学レンズに仕上げる。この作業を「レンズ加工」とよんでいる。
   まず、下のチャート図をご覧いただきたい。
光学ガラスを加工して完成レンズに仕上げるまでの工程を示したものだ。
 

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   レンズ加工には、大きく2つのルートがある。1つは光学ガラス材の表面を半円状に研磨して「球面レンズ」を作るルート。もう1つは光学ガラス材を高温高圧でプレス加工して「非球面レンズ」を作るルートである。

 

   非球面レンズには、ガラスレンズを材料にする非球面レンズ(ガラスモールド非球面)、プラスチックとガラスレンズを使う非球面レンズ(複合非球面)、この2つがある。交換レンズに使用される複合非球面レンズは球面レンズにプラスチック非球面を貼り付けて仕上げるのが一般的である。
   ガラスモールドの非球面レンズは、非球面形状に仕上げた精密金型を使って、粗ずり/ 精研削/ 研磨工程にてある程度の形状まで追い込んだガラス素材を高熱高圧でプレスして作る。

   なお、球面、非球面レンズの材料となる光学ガラス材はタムロンでは作っていない。多くのカメラ/レンズメーカーもそうであるが、光学ガラスレンズ製造の専門メーカーから、ほぼレンズの形に切り分けられた部品として購入している。

   タムロンでは、レンズ加工をおもに青森の浪岡工場と中国・仏山のタムロン工場などでおこなっている。ただし、ガラス材の非球面レンズ(ガラスモールド=GM)は青森にある浪岡工場内だけでしか製造していない。複合非球面レンズは仏山・タムロン工場でも製造している。
 

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   複合非球面レンズの製造工程。この装置で、樹脂(プラスチック材)を非球面形状に仕上げてから、それをガラスレンズに貼り合わせて複合非球面レンズに完成させる。接着面にゴミやほこりが入り込まないように作業場はクリーンルームになっている。クリーンルーム内に入室するときは全員、防塵服(帽子もクツも)が義務づけられている。もちろん、見学するために入室した私も完全な防塵服姿である。室温は常時、一定に保たれている。仏山のタムロン工場で。

 

   非球面レンズ作りは、とくにガラスモールド非球面の製法は、どこのメーカーもそうであるが秘中の秘となっている。設備も特殊なうえに製造の難易度も極めて高い。ノウハウもいっぱいある。超精密な金型作りはもちろん、プレスするときの温度や圧力、プレスした後の離形時の温度、時間などなどに秘密のノウハウがぎっしりと詰まっている。ナノ構造のレンズコーティング・eBANDの処理、精密金型の製作手法とともに、タムロンの門外不出の技術といってもいいだろう。

   非球面レンズは今後、さらに進化し高性能化していくことは間違いない。描写性能を飛躍的に向上させる「キーデバイス」でもある。その非球面レンズ作りには当初から高い技術力をタムロンは持っていて、将来が愉しみでもある。

   球面レンズのほうは昔からのオーソドックスなやり方が受け継がれ、研磨と洗浄を繰り返して仕上げられる。レンズ研磨にはまだまだ職人技術が求められるところが多い。
   青森の浪岡工場ではベテランの"レンズ職人"が研磨レンズの完成基準となる「原器」をひとつひとつ時間と手間をかけて作っている。そうしてできあがった原器が仏山タムロン工場に送られている。ガラスモールド非球面も原器も、マザー工場である青森工場の"職人"たちでしかできないことも多い。

   中国仏山のタムロン工場では、現地スタッフを養成して職人技術の向上に日々、努めている。
   しかし、いっぽうでは職人ワザに頼らない自動化も進められている。作業の自動化のメリットは品質の安定性とスピードである。作業者の熟練度にかかわらず、狙った品質の製品が数多く短時間で仕上げられる。自動化のデメリットとしては自動化設備のための製造コストを考えると少量生産に不向きなことだ。
   タムロンは職人技術を大切にしつつ、必要なところは自動化をすすめていこうとしてるようだ。
 

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   粗ずりを終えて、次の研磨工程である「精研削」工程。精研削は専用の研磨機械を使って「半自動」でおこなわれる。昔のレンズ研磨や研削工程のように、研磨剤が飛び散ったり、つききりで作業をしたりすることもない。数台の研磨機を調整してレンズをセットすれば、あとは設定した精度のレンズ面に仕上がる。仏山・タムロン工場。

 

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   精研削をすませたレンズは、ここの「研磨」工程で透明なレンズ面に仕上げられる。この研磨機械も調整さえすませておけば、あとはレンズ材料をセットするだけで所定の精度に自動的に研磨される。研磨の自動化は、仕上がりの品質の安定につながる。研磨を終えると、すぐに洗浄工程に移る。仏山・タムロン工場。

 

   とはいえ、レンズ研磨、レンズ加工にはまだまだアナログな職人ワザ的な製法が多く残っている。細やかな気配りをして丁寧な作業をしないと優れた品質の製品を生み出すことはできない。
   たとえば、レンズ研磨をおこなうときに研磨剤を使うのだが、研磨工程の終了ごとに完全に洗浄をおこなってから次の作業に移らないことには精度の高いレンズ面に仕上げることはできない(洗浄液は純水を使用する)。さらに洗浄したレンズは空気中の酸素に反応(レンズのヤケ)しやすく変色してしまうので処置には十分に配慮しなければいけない。

   ちなみに、上のチャート図にあるように、レンズ研磨は表面の粗さをだんだんと滑らかにしていく作業で、おもに三段階ある。研磨の段階をふみながら、だんだんと指定の曲率に仕上げていく。
   第一段階の「粗ずり(あらずり)」では約4~10μmの表面の粗さだが、次の「精研削」では約0.2μmまで磨き込まれる。1μmは0.001mmだ。さらに仕上げの「研磨」ではレンズ表面凹凸は約0.002~0.015μmぐらいになり透明な写真レンズとなる。

   研磨されたレンズの曲率が設計値に合致しているかチェックする道具が原器レンズ。前述したように、原器はひとつひとつ手作りするオリジナルのガラスレンズである。特別なワザを持った職人が丁寧に作り上げる。青森の浪岡工場にはそうしたベテラン職人が何人もいる。
   原器の出来上がり次第で量産されるレンズの精度が決まってしまうこともある。そうした原器は、自社のぶんだけでなく他社からの注文を受けて作ることも多い。あまり知られていないが原器作りとしてタムロンは名の通ったメーカーでもある。
 

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   レンズ研磨の工程では「水と研磨剤」を大量に使用する。そのため、どうしても汚れが目立ってくる。しかし、レンズ研磨工程でも可能な限りゴミやほこりを排除して作業をしなければならない。仏山のタムロン工場のレンズ研磨工程では、写真のようにモップで床の汚れを丁寧に拭き取っている人を何人も見かけた。こうしたちょっとした「気配り」が製品の品質に直結するのだ。仏山のタムロン工場で。

 

   所定のレンズ研磨と洗浄をすませると、レンズ表面にコーティングを施す。ゴミやほこりに細心の注意を払いながらコーティング処理をおこなう。
   レンズの光軸がレンズ径の真ん中になるようにレンズ周囲(端面)を削る工程もある。芯取り(芯出し)とよばれるもので、1点しかない光軸を見極めて正確にレンズ周囲を削っていく。いまはほぼ自動化されているとはいえ、ほんのわずかなズレも許されない神経を使う作業である(コーティング前にこの作業をすませてしまうこともある)。この芯出し工程のときに、指定されたレンズ枠にぴったりと固定されるように端面形状も正確に整える。
   芯取り作業は非球面レンズでもおこなう。ただしやっかいなことに、非球面レンズには「光軸」が多く存在するため、いっそう神経を尖らせて作業をおこなう必要がある。

   必要に応じてレンズは、特殊接着剤を使って2枚貼り合わせの接合をおこなう。合わせ面にゴミやほこりはもちろん、小さな気泡が入り込まないように神経を使って作業する。
   レンズコーティングや接合を終えたレンズは、1枚ずつその外周端面部(コバ)を黒く塗りつぶす。これが墨塗りとかコバ塗りとよばれている作業。
   入射してきた光がレンズ内で反射するのを防ぐためだ。レンズによっては端面部からごくごくわずかに"はみ出して"墨塗りをおこなうこともある。簡単そうに見えてこれがとても難しい作業である。
 

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   タムロンのホームページの中に、交換レンズのできるまでの工程を、たくさんの写真を使ってビジュアル紹介しているページがある。とても良くできたページだ。
   『 VIRTUAL TOUR PRSENTED BY TAMRON  CAMERA LENS MANUFACTURING  一眼レフ用レンズができるまで』 がそれで( http://www.tamron.co.jp/monozukuri/tour/ )ぜひ、参考にしてもらうといいだろう。

 

   レンズ加工の作業の中では、何度も検査(性能チェック)が繰り返され次の行程に進んでいく。とても「地味」で「根気」の必要な作業だ。でも、品質を確保するために決して避けることはできない。
   肉眼による目視検査も明るい照明を透して、厳密に外観チェックをする。小さなゴミがあれば丁寧に拭き取り、表面に微かなキズがあっても不良品として外す。
こうしてようやくレンズ単体が完成し、レンズ組み立て工程に進む。

 

 

   というわけでレンズ加工については話がやや長くなりました。
   次回は、仏山のタムロン工場のおおまかな紹介と案内をしていきましょう。中国のタムロン工場って、いったいどんなところなのか。どうぞ次回をお愉しみにお待ちください。
 

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   タムロン工場のある仏山市内の市場で。仏山市のすぐ隣にある広州市は「食の都」で有名な街。この市場には魚、肉、野菜、乾物などなど(じつは、生きたヘビやカメなどの食材も見かけた)多種多彩。ここは魚屋さん。ご夫婦なのか、それともご兄妹なのか。「写してもいいですか」とゼスチャーまじりで声をかけたのだが、ふたりとも大いに照れてこちらを向いてくれない。
   SP 45mm F/1.8 Di VC USD (Model F013)、絞り優先オート(F/3.5、1/50秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISOオート(ISO1100)。

 

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   仏山市内はとても治安がいい。夜、ちょっと怪しげな路地裏を一人で歩いていても、怖いと感じることが一度もなかった。賑やかな繁華街なら、ほら、こんなふうに子どもたちが元気に遊んでいる。「おーい、写真を撮るぞ」と声をかけると(もちろん日本語で)、やはり中国の子どもたちも一斉にピースサインをする、やれやれ…。高倍率ズームレンズでも手ブレ補正(VC)内蔵なら暗い夜のシーンでも気軽にスナップができる。ただし被写体ブレだけは優秀なVCでもどうしようもないけれど。
   28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)、絞り優先オート(F/5.6、1/25秒)、マイナス0.7EV露出補正、ISO12800。

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)

多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。

ホームページは『 http://www.thisistanaka.com/

とある日、写真家・まるやゆういち氏がSP35mmを片手にオフシーズンの海へ。まるや氏の
気持ちを綴った文章とともに、単焦点35mmでモデルをとらえた写真をご覧下さい。

 

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彼女と待ち合わせたのは江の電のある駅。
雲がほとんどない快晴。

近くのお店でパンを買い込み頬張っていたら
いつの間にか約束の時間だったようだ。

大きな瞳に茶色い髪の毛。少し強い日差しが
それらをより際立たせる。

少しドキドキした気持ちを彼女に察せられないように
さっとそこに立つように指示して2枚だけ撮った。

◎SP 35mm F/1.8 Di VC USD
絞り優先 F/1.8 1/800秒 ISO200 +2補正

 

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ポートレイトに限らない話だが
その日のレンズの選択はカメラ選びより難しい。

いや、ズームにしてしまえば早いのだろうが
僕は単焦点、しかも比較的広角側とはなから決めている。

広角は自分のその1歩2歩で画角を調整する事になるが
そう、それは彼女に近づいたり離れたりすることによって
彼女もまたどこかで自分に良い意味での緊張感やそして
親近感などを抱くのだ。
、、、と勝手に思っている。

◎SP 35mm F/1.8 Di VC USD
絞り優先 F/1.8 1/2000秒 ISO200 +2補正

 

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35mmという焦点距離は広すぎず狭すぎず。
人によっては中途半端に感じる事もあるかも知れない。
実際自分がそうだったしそう言う声もよく耳にする。
それでも今こうしてそれを持ち出すのはその応用範囲の広さだ。
自分が動いた分だけしっかりと画角は変化する。
歪曲は望遠に比較したらそれなりに意識しなければならないとは思うが
それ以上にこれ1本で引きの絵はもちろん、
マクロ的な写真も攻める事が出来るのには驚いた。(20cmから撮れる!)
あ、そうそう逆光に攻めつつこの玉ボケも見て欲しい。
キラキラに弱いのは女子も男子も一緒なんだと思った。

◎SP 35mm F/1.8 Di VC USD
絞り優先 F/1.8 1/4000秒 ISO200 +2補正

 

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だいぶ日が落ちて来た。

夕陽が赤い理由って知ってる?と問いかけようとしてやめた。
彼女はこう見えてばりばりの理系。
かたやぼくは完全文系。
その理系知識の前にひれ伏すのが
目に見えて恥ずかしかったのだ。

それにしても写りのいいレンズだと思う。
撮影後の彼女との会話も少し上の空。
だって液晶でみる写真でさえうっとりする仕上がりになっているから。
切れ味の良い包丁は料理をより美味しくする。
きっとおんなじ理由かな。

◎SP 35mm F/1.8 Di VC USD
絞り優先 F/1.8 1/400秒 ISO200 +2補正

 

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彼女と知り合ったのは1年程前。
実は郷里が同じ。
その時彼女はバリスタ。
そう、コーヒーで出逢いました。

でも出身地は2人とも青森県。
方言でしゃべり合うのって
なんだか暗号を使っている気分で楽しい。

夜に連れ出したのはこの時が最初。
ポートレイトの大切な要素は表情、ではあるけれど
それだけではないと思う。
構図?露出?アングル?ポージング?
もちろん全部大事。

◎SP 35mm F/1.8 Di VC USD
マニュアル露出 F/1.8 1/60秒 ISO1600

 

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最高の道具は最高のパフォーマンスを手助けしてくれる。
クリアな描写に手ブレ補正機能という武器が加わる事で
明らかに撮れるシチュエーションが広がる事を実感した。
ISOは出来るだけあげたくない。
シャッタースピードは遅くしたくない。
この相反する条件に折り合いをつけてくれたのが
VC(Vibration Compensation)。

高鳴る胸の鼓動が腕まで伝わると知らずに
手ブレを起こしている事がある。
目で相手を見つめ、脳の一部で自分の挙動を
コントロールする。
その身体の負荷をこのVCに頼るだけで
集中力の強化と疲労の軽減に繋がる。

◎SP 35mm F/1.8 Di VC USD
マニュアル露出 F/1.8 1/60秒 ISO400

 

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距離感。
モデルとフォトグラファー、というより
相手と自分。
その関係性を象徴するのが距離感。
近いのか離れているのか。
見ているのか見つめているのか。
意識しているのか意識しなかったのか。
好きなのか好きになりかけているのか。

距離感。

ぼくはこの35mmという画角でそれをひたすら
表現しようと思っている。

◎SP 35mm F/1.8 Di VC USD
マニュアル露出 F/1.8 1/50秒 ISO800

 

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撮影後記
単焦点の良さはその覚悟に在る、と思う。
その焦点距離でしか撮れない。
だから撮れない時は諦める。
その代わり撮れる状況では妥協しない。

着けていて楽しいレンズです。
軽い。きっちり写る。暗くてもVCがある。
これ1本だけでスナップ、ポートレイトをこなします。
35mmポートレイトのコツは背景をどれだけ見極められるか。
否が応でも被写体の周りの情景が入り込んできますからね。
今回のようにオフシーズンの海なんか人が居なくて撮りやすいですよ。
ホントに撮った後の仕上がりが楽しくて仕方のないレンズでした。

 

maruyaまるやゆういち

1974年 青森県生まれ
1992年 上京
2000年 タヒチの美しさに惹かれ写真を始める
2003年 「PHaT PHOTO」写真教室で学ぶ
2004年 写真家テラウチマサトに師事
2011年 独立
2016年現在 人物や商品撮影などを中心にしつつ、120名以上の受講生を誇る単焦点倶楽部を主宰するなど撮影講師としても精力的に活動する。前職は洋服店店長、大工と異色の経歴を持つ。

Facebookページ
https://www.facebook.com/yuichi.maruya/

 

まるやゆういちさんご使用のレンズについて詳しくは、
SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)製品ページ:
http://www.tamron.jp/product/lenses/f012.html

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   優れた描写性能を備える交換レンズであるためには光学設計技術が重要であることはいうまでもない。それゆえ、ややもすると光学設計者だけが脚光を浴びることも多くあり、光学設計者はレンズの良し悪しを左右するキーマンだ、というふうに見られがちだ。
   しかし、私たちが普段使用する交換レンズのことを考えるとき、ただ光学設計が良ければいい、というものでもない。

   光学設計者が図面で指示した通りにレンズを研磨して光学レンズに仕上げる技術ももちろん大切だが、その光学レンズ群をしっかりと保持させて、スムーズに動く鏡筒(鏡枠・レンズ枠)の設計の重要さを見逃してはいけない。
   さらに、AFや手ブレ補正(VC)などのシステムや電子機器部品、それらを制御するソフトウエアも優れていないことには「良い交換レンズ」であるとは言えない。

   最新の交換レンズには、AFユニットや手ブレ補正(VC)ユニット、絞り機構ユニット、それらを制御するためのICや電子基板類などが、狭いスペースにぎっしりと詰め込まれている。重要なユニットや部品が光学レンズ群とともに、レンズ鏡筒内にコンパクトに配置しなければならない。
   組み込んだパーツ類は決して緩んだり外れたりしないように部材や形状を考え、さらにスムーズに動作するように細心の注意を払いながらレンズ鏡筒(鏡枠)を設計していく必要がある。

   その設計全般を担っているのが、タムロンでは機構設計とよばれる部門である。メーカーによっては枠設計とかメカ設計とよぶところもある。
   今回は、このタムロン機構設計の仕事の中の「一部」を紹介したい(なお、AFやVCなどのタムロン電子設計については機会があれば項をあらためてご紹介したい)。
 

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   「16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO (Model B016)」の構成レンズ群の配置をイラストにした構成図(左)と、レンズを断面カットした実物モデル(右)である。左のイラスト化したレンズ構成図を見ると"隙間だらけ"のように見える。しかし実際は、右の写真のように複数に重なった鏡筒やAF、VCなどのユニットがびっしりと組み込まれている。ズーミングするとレンズ群とともに鏡筒がスムーズに前後するように作られているというわけだ。

 

   機構設計者は、ときにはAFやVC、電子部品の設計担当者から「これじゃあパーツを入れるスペースが足りない」と言われたり、光学設計者からは「このレンズ群が滑らかに高速で動くような仕組みを考えてくれ」など要求を出されたりしながら、加工コストや部品コストに悩みつつ設計を進めていく。
   いっぽうで、レンズを組み立てる工場側からは「もっと組み立てやすい設計に変更してくれ」といった要求も突きつけられ、設計変更をせざるを得ないこともある。

   そうしたあちこちからの要望を聞き、調整しながら(ときには頭を下げて頼みながら)設計を進めていくのが機構設計者たちだ。交換レンズの設計者たちのなかでは、もっとも苦労の多い部門ではないだろうか。私は交換レンズを使いながら、「このレンズは機構設計の人たちがよくがんばったんだなあ」と思うことがよくある。

   さて交換レンズは、ピント合わせのときやズーミングをしたときに、レンズ群が前後に移動する。その動きをいかにスムーズになるように設計するかも機構設計者のウデの見せ所である(ピント合わせは高速でAFしなければならないので、いまは小さなレンズ群をモーターで前後移動している)。
   ズーミングもフォーカシングも、いまはほとんどの交換レンズはピントリングやズームリングなど鏡筒部を回転させる方式。レンズ内部で複数の光学レンズ群は前後に移動する。つまり回転運動を直進運動に変える機構が必要となるわけだ。それを滑らかに、スピーディーに動かすようにしなければならない。
   「カム溝」とよばれる駆動機構がそれを担う。
 

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   カム溝加工のレンズ枠は、アルミダイキャスト製の円筒からいくつかの切削加工を経て仕上げられる。写真左は、加工前のアルミ製円筒と、それを目的の形状に近づけるように一次加工されたもの。それを写真右のようにカム溝加工や表面処理をすませてできあがる。大変に精密な加工精度が要求される。これは16-300mm (Model B016) のフォーカスカム筒(AFレンズ群を駆動させるための枠)のひとつ。このあと、黒くアルマイト処理される。中国・仏山のタムロン工場で。

 

   筒状のレンズ鏡筒に細い溝が彫り込まれ、その溝に沿ってカムピンが動いて、多重構造になった鏡筒が前後する。そのレンズ群は、いつも前や後方向に一定移動するとは限らない。ときには、あるレンズ群はゆっくりと前に移動するが、同時に別のレンズ群は高速で逆方向に移動するということもある。
   ズームレンズの場合や、第3回のブログで紹介したSP 35mm F/1.8 Di VC USD (ModelF012) レンズのフローティング機構などではレンズ群は大変に複雑な動きをする。カム溝をどのように設計し、精度良く加工して仕上げるかでピント合わせやズーミングのときの操作感の良し悪しが決まってしまう。

   カム溝のある鏡筒には、おもにプラスチック成形枠とアルミ金属枠のどちらかを使い分けている。プラスチック成形の枠は大量生産と低コストに利点がある。アルミ金属枠は耐久性とスムーズなカム移動に利点がある。しかし製造に手間がかかる。
   タムロンは一部の低価格レンズを除いて、アルミ金属製の鏡筒のほうを使い続けている。タムロンのこだわりでもある。
   アルミ金属は軽いとはいえプラスチック材に比べると重い。射出成形によって容易に仕上がるプラスチック成形枠に比べ、アルミ金属枠はカム溝加工に高い技術力も時間もコストもかかる。

   手に触れるレンズ外装部には金属を使用し、中身の鏡筒部にはプラスチック成形を使用しているメーカーもある。しかしタムロンはその逆で、見えないレンズ内部には精度と強度を優先して金属製の鏡筒を使うが、レンズ外装部には軽量化を優先してプラスチック成形部品を使う。
   (写真・1)のレンズ断面写真を見ると、鏡筒の白く見える部分がアルミ金属枠、黒く見えるのがプラスチック成形枠だ。タムロンの交換レンズにはそんなこだわりレンズが多い。
 

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   仏山市の中心街にあるカフェ。夕暮れ前に、お店の前で店長からの訓示(?)だろうか、それとも、新人店員たちへのアドバイスだろうか。仏山の街中にあるレストランやお店の店員たちは(以前の中国の店員たちとは大違いで)とても親切で愛想も良くなった印象を受けた。それにしても、VC(手ブレ補正)内蔵のレンズはいいですねえ。低速シャッタースピードでも手ブレを気にせずにシャッターチャンスを逃すことなく軽々とスナップができる。
   28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)、絞り優先オート(F/8、1/30秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISOオート(ISO450)

 

   タムロンは高倍率ズームレンズの先駆者でもある。高倍率ズームはズーミングの移動量も大きく、かつレンズ群も複雑に動く。レンズ全長も広角端から望遠端にズームしたときに変わるだけでなく、レンズの重量バランスも大きく変化する。
   しかしそれでも、とてもスムーズにズーミングできるように細やかな配慮がなされている。さらにもう1つタムロンズームレンズで注目して欲しいのが、自重落下するレンズが大変に少なくなったことだ。
   ズームレンズを撮影中に上や下に向けたとき、レンズの自重により勝手にズーミングしてしまうことがあった。それが、最近のタムロンのズームレンズでは、ほとんど見かけなくなった。機構設計者たちの苦労のたまものだろう。

 

 

   カム溝の設計と、そう、もう1つ大切なことは、レンズの組み立てだ。ちょっとしたネジの締め付け具合や、組み立てた後の動作チェックが丁寧におこなわれているかどうかが重要になる。滑らかなズーミングの操作感と不用意な自重落下を防ぐためには、レンズ組み立て時の細やかな配慮と調整が大事なのだ。
   レンズ組み立て時に、しっかりとした気配りと丁寧な作業がなされているかどうかで「レンズの品質」が決まるといってもいい。

   さて、次回は交換レンズの重要部品である光学レンズの研磨のもろもろについて解説をしていきたい。だんだんとタムロン工場の中に入っていいきますので、どうぞお愉しみに。
 

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   高倍率ズームレンズをセットしたカメラを一台だけ、手に持ったまま東京の街を歩くのが好きだ。シャッターチャンスを逃さないためには、カメラバッグに入れずに「手に持って歩く」ことが大切。バッグに入れていると、つい、めんどうになってしまうことがあり、それでシャッターチャンスを逃してしまう。向こうから自転車のハンドルに前足を載せて洒落たスタイルの犬がやってきた。飼い主さんにお願いをして数カットを撮らせてもらったのだが、カメラを構えるとさっとポーズをとったのには驚いた。
   16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO (Model B016)、プログラムオート(F/6.3、1/320秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISOオート(ISO800)

 

tanaka田中 希美男(たなか きみお)

多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、 スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「 デジタル一眼上達講座」、「 デジタル一眼 " 交換レンズ 入門」 ( ともにアスキー新書 )、「 デジタル一眼レフ・写真の撮り方」( 技術評論社 )、「 名車交遊録」 ( 原書房 ) 、「 名車探求」 ( 立風書房 )など。 写真展は多数開催。 現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。

ホームページは『 http://www.thisistanaka.com/